老犬の前庭疾患は突然発症するって本当?予防のためにできること

現在、日本で飼育されている犬の5割以上がシニア犬です。
基本的に7歳からシニア期とされてはいるものの、現代のシニア犬は元気そのもの!ハイシニア期と呼ばれるようになる10歳くらいまでは、老犬には見えないことの方が多いのではないでしょうか。
しかし、「うちの子はシニアになっても元気だから…」と油断していると、ある日突然飼い主さんを愕然とさせることがあります。その一つが突然発症する前庭疾患という病気です。
目次
前庭疾患はすべての犬が発症する可能性のある病気
前庭疾患(ぜんていしっかん)とは、耳の奥にある内耳という平衡感覚をつかさどる器官になんらかの問題が生じ、神経症状が引き起こされることで、体のバランスを上手に保てなくなる病気です。
この前庭疾患という病気は、すべての年齢の犬に発症する可能性がありますが、最も多く発症しているのは高齢犬です。
犬の前庭疾患の主な症状
- 眼振 …… 眼球が無意識に水平方向または垂直方向に揺れ動き続ける
- 運動失調 …… 体の麻痺はないはずなのに動作がぎこちなくなる
- 捻転傾斜 …… 無意識に左右のどちらかに頭が傾いてしまう
- 転倒 …… 歩くとフラフラしてひっくり返る
- 旋回 …… 左または右のどちらか同じ方向にグルグル回って歩く
眼振のせいで目が回ってしまい、繰り返す吐き気や嘔吐に苦しむこともあります。そうなると、必然的に食欲も失われてしまうことになるでしょう。
ある日突然、こうした症状で犬を苦しめる前庭疾患という病気は、特定の犬種にみられるものではありません。純血種・雑種に関わらずどんな犬であろうと、ある日突然発症する可能性があるのです。

犬の前庭疾患の原因
犬の前庭疾患は、体の平衡感覚をつかさどる部分になんらかの障害が起きることによって引き起こされます。しかし、厄介なのはその原因が一つではないことです。つまり、犬が前庭疾患を引き起こしたときは、まずは原因を探らなければいけないのです。
犬の前庭疾患の原因は、主に次の3つに分類することができます。
- 末梢性……中耳炎・内耳炎・鼻咽頭ポリープ・腫瘍・化学物質の中毒など
- 中枢性……脳腫瘍・脳梗塞・脳出血・髄膜脳炎・甲状腺機能低下症など
- 特発性……原因不明
末梢性や中枢性の前庭疾患には、これだ!という原因があります。つまりはその原因を治療することが、前庭疾患の治療にもつながっているわけですね。
しかし、厄介なのは特発性の前庭疾患です。なにせ原因がわからないわけですから、症状に合わせた対症治療で改善を促すしかありません。そして、高齢犬が発症する前庭疾患で圧倒的に多いのは、この原因不明である特発性の前庭疾患です。
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犬の前庭疾患の予後は良好なケースが多い
老犬となった愛犬がある日突然原因不明の前庭疾患を発症したら、飼い主としては不安でいてもたってもいられなくなることでしょう。
愛犬が目の前でヨロヨロしてまともに歩くことができなくなってしまった姿は、飼い主さんにとってかなり辛いものになるのは間違いありません。
このままどんどん動けなくなって寝たきりになり、そのまま治らずに旅立ってしまうのではないだろうか――。そんな不安でいっぱいになり、飼い主さんの精神はかなり削られてしまうことになるでしょう。
ところが、犬の前庭疾患は意外にも予後(病気がたどる経過と結末)は良好なことが多いのです。
末梢性や特発性の前庭疾患の場合、治療を開始すると数日から10日もすると症状の改善が見られるようになり、2週間から1ヶ月程度でほとんど正常な状態にまで回復するケースが多いのです。
もちろん回復には個体差があるので、より多くの時間が必要なこともあります。それでも、だいたいにおいて2ヶ月もすれば、ほぼ元の状態に近いところまで改善していることが多いのです。
ただし、これはあくまでも前庭疾患の原因が末梢性あるいは特発性の場合。中枢性の前庭疾患は基礎疾患の治療が困難なことから、症状がどのように収束していくのかを見通すのは難しい面があります。

こんな症状がみられたら前庭疾患の可能性あり!
愛犬が前庭疾患と思われる症状を発症したとき、CTやMRI検査をすることである程度原因は明らかにできるでしょう。しかし、医療保険が適用される人間とは違い、犬がこうした精密検査を受ける場合、かなりの費用がかかります。
そのため、精密検査をしない状態である程度の予測をたてるためにも、前庭疾患と思しき症状について知っておきましょう。
- 眼振・嘔吐・歩行困難・捻転傾斜がみられる → 末梢性もしくは特発性前庭疾患の可能性あり
- 外耳炎・顔面神経麻痺・旬膜(目頭にある第三のまぶた)の露出などがみられる → 内耳炎が原因の前庭疾患の可能性あり
- 眼振の方向が垂直・捻転傾斜がかなり強い → 中枢性(脳の病気)が原因の前庭疾患の可能性あり
- 前庭疾患の症状に加えて脱毛・元気消失・むくみがみられる → 甲状腺機能低下症が原因の前庭疾患の可能性あり
眼振が水平方向(左右)の場合は末梢性や特発性の前庭疾患のことが多く、比較的順調な改善が期待できるといわれています。
しかし垂直方向(上下)の場合は、なんらかの脳疾患が疑われます。原因となっている基礎疾患の治療が困難なことから、前庭疾患の症状改善も一筋縄ではいかないことが多いようです。
いずれにしろ、かかりつけの動物病院を受診することは必須!眼振が水平方向だから放っておいてもそのうち治るだろうと思っていたら、実は脳疾患が原因だった、というケースもあります。とにかく受診!これが大事です。
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犬の前庭疾患を予防するためにできること
犬の前庭疾患は末梢性・中枢性・特発性の3つに分けることができます。このうち、末梢性の前庭疾患に関しては、ある程度は予防することができるかもしれません。
- 外耳炎が起きていないか定期的に耳の中をチェックする。
- 耳の中に異物が入ったときは、すぐに動物病院を受診する。
- 中耳炎の症状を見逃さない。
- アレルギーやアトピー性皮膚炎がある犬の場合は、耳の中や口の中の状態も含めて体調管理をしていく。
- 中毒物質を犬のいる環境から徹底的に排除する。
脳に原因のある中枢性に関しては、予防はかなり困難といえるでしょう。「何かおかしい?」「いつもと違う?」という初期段階での症状(ちょっとした違和感)を見逃さないこと。予防としてできるのは、これしかなさそうです。
では、原因不明の特発性前庭疾患を予防するにはどうすればいいでしょうか。実際のところ、特発性の前庭疾患を予防することはかなり困難です。なにせ原因不明なわけですから、それはそうですよね。
となると、高齢犬が発症しやすい特発性の前庭疾患を予防するには、もう少し大局的に考えていく必要がありそうです。

犬の特発性前庭疾患を防ぐためにできるのは腸内環境の改善と口腔内のケア
まだまだ研究段階の話ではありますが、犬の前庭疾患と腸内環境には間接的な相関関係があるのではないか?との考察があります。というのも、脳と腸内環境は腸脳相関という、切っても切れない重要な関係にあるからです。
人間のケースにはなりますが、腸内環境悪化と神経変性疾患(脳や脊髄の神経細胞の障害が原因の病気)や、平衡障害の悪化には関連があるかもしれないと示唆されています。もしかしたら、犬の場合にもあてはまるかもしれません。
また、犬の心臓になんらかの障害があると、全身において血流は不十分になりやすい状態にあります。当然のことながら、脳や内耳への血流も低下することになるでしょう。その結果、前庭疾患の引き金を引いてしまう可能性も示唆されています。
犬の心臓病を予防する最大の方法は、歯周病を予防することです。そのためには、毎日の口腔内ケア――すなわち歯磨きが欠かせません。
とはいえ、腸内環境をしっかり改善し、口腔内ケアをがんばって歯周病を完全に防いだとしても、前庭疾患にかかる可能性はあります。
しかし、腸内環境が良好で歯周病がない状態であれば、その犬の体はかなり健康です。であれば、特発性の前庭疾患を発症したとしても、順調な回復が見込まれるはず。腸内環境の改善と口腔内ケアは、メリットばかりでデメリットになることは一つもありません。
>『【現代の犬の健康】は、腸を温める食事の継続が必須条件となる』
今後の愛犬の健康にお役立て頂ければ幸いです。

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