犬のアルブミン値が低いと体の中で何が起こる?

犬の低アルブミン血症は、アルブミン製剤やステロイドの投与により比較的短期間で正常値に回復することは珍しくありません。しかし問題は、その数値上昇が一時的なものになりやすく、近々に正常値を割り込んでしまうことです。
そうなると「アルブミン値が低い」→「投薬治療」→「アルブミン値回復」→「アルブミン値が低い」というループを繰り返し、気づけばアルブミン値は上がらないのに薬漬けということも…。
愛犬のアルブミン値を一時しのぎではなく根本から改善するには、まずはアルブミンとは何なのかを正しく知ることが大切です。
※現在ステロイド治療をしている又は可能性がある方はこちらも合わせてご覧ください。
>『 犬のステロイド治療と副作用|脱投薬のカギは腸内環境の改善』
目次
アルブミンは肝臓で合成されるタンパク質の一種
アルブミンとは、主に肝臓で合成されるタンパク質の一種です。血液を放置すると数分で固まりはじめるのは、擦り傷や切り傷を負ったことのある誰しもが経験済みですよね。
さらに固まり始めた血液を数時間そのままにしておくと、固まった部分がどんどん収縮し、凝固した部分の周囲に黄色っぽい液体が出てきます。
絆創膏を貼ると見えなくなるのでわかりにくいですが、この黄色い液体の正体は「血清」で、血清中に含まれているタンパク質が「アルブミン」と「グロブリン」です。
グロブリンは肝臓や骨髄で作られるのに対し、アルブミンはその多くが肝臓で合成されます。そのためアルブミンの値が正常値より低いときは、まずはじめに合成元の肝臓で何か異常が起きているのではないか、と疑われるわけですね。
そして肝臓に異常がみられないと、腎臓や腸管などからアルブミンが漏れ出している可能性を考えることになります。
アルブミン低下と食事についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

アルブミンの働きを見ればわかる!低いと腹水が溜まる理由
アルブミンの役割は、大きく分けると次の3つです。
- 血管内の水分を保持することで血管内と血管外の水分量を調節する。
- 微量元素(カルシウムや亜鉛など)・脂肪酸・酵素・ホルモン・薬の成分などと結合し全身に運ぶ。
- 毒素と結合し中和させる。
アルブミン値が低い=アルブミンが足りなくなった血管内では、正常に水分を保持できなくなります。すると細胞や血管から水分がしみ出してしまい、その結果として腹水や胸水が溜まることに…。
また、体の維持に必要な微量元素や脂肪酸、酵素、ホルモンなどが全身に行き渡らなくなり、様々な体調不良を引き起こします。
そしてアルブミンという薬の成分の運び手が不足している中で投薬することになるため、期待しているほど効果があがりません。
さらには中和できなかった毒素が全身を巡り、ますます体調不良が進むという悪循環へと陥ってしまうのです。
犬のアルブミンが正常値より低くなる原因
犬のアルブミンが正常値より低い場合、様々な原因が考えられます。
- 肝機能が大幅に低下したため、アルブミンの合成能力に問題が生じた。
- 腎機能に問題が生じ、腎臓からアルブミンが漏れ出している。
- 腸に炎症が起こり、腸からアルブミンが漏れ出している。
- 消化管の機能低下により栄養吸収に問題が生じている。
- 食べ物の栄養状態が悪く、体が栄養不足に陥っている。
- 過剰な輸液で血液が薄まっている。
肝硬変、ネフローゼ症候群、炎症性腸疾患(IBD)、リンパ管拡張症など、犬のアルブミン値を低下させる原因には様々な病気があります。
しかし、ある意味最も厄介なのは、あらゆる検査をしても原因が特定できないケースです。
アルブミンが低い理由がはっきりしないまま、「おそらく〇〇だろう」という判断のもとで治療が開始され、ずるずると投薬治療が長引くことに。
しかし前項で述べたように、アルブミンが足りない体は薬の成分がきちんと全身に行き渡りません。その結果、投薬治療の成果が思うようにあがらないまま、薬の量ばかりが増えていくのです。
>『アルブミン値が低い!投薬に行き詰まる前に試してほしい改善方法』

犬のアルブミンが正常値より高いケースは脱水
犬のアルブミンは正常値より低いケースばかりが取り上げられますが、実は正常値より高いこともあります。
ではなぜアルブミン値が正常値より高いケースがあまり取り沙汰されないのかといえば、端的に言ってしまうと、病的な理由で増加することがほぼないからです。
犬のアルブミン値が正常値より高いとしたら、その理由は「脱水」と考えてまず間違いありません。脱水によって体の水分が減少したせいで血液が濃縮し、必然的にアルブミン値が高くなるのです。
つまり、犬のアルブミン値が正常値より高い場合は、脱水を解消すれば正常値に戻せるでしょう。
アルブミンのことを知ることが改善の第一歩
愛犬のアルブミン値が低いと判明した時、ただ闇雲に投薬任せにしても、期待するほどの改善は見込めません。
アルブミンが犬の体内でどのような働きをしているのか、足りないせいで何が起きているのかを知ることで、おのずと何をすべきかが見えてくるのではないでしょうか。
犬の低アルブミン血症は一朝一夕で改善することはできません。地道に毎日コツコツ積み重ねていくことが、根本からの改善につながります。
>『犬のアルブミン低下は「腸を温める手作りご飯」が解決の糸口』
今後の愛犬の健康にお役立て頂ければ幸いです。

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