犬の手作りご飯は歯石がつきやすい、という大きな誤解

「犬の手作りご飯はドライフードに比べて歯垢や歯石が付きやすいから、歯周病にかかりやすい」――これは大きな誤解です。また、「ドライフードに比べて手作りご飯は柔らかいものばかり食べさせるので、アゴや歯が弱くなる」――これも大きな誤解です。
犬が歯周病にかかりやすいのは事実ですが、「手作りご飯」が原因ではありません。
歯磨きなどの口内ケアがきちんとできていなければ、手作りご飯とドッグフードのどちらを食べさせていても、歯周病のリスクは確実に高まります。
目次
ドライフードを噛むと歯垢が落ちるという考え方、変じゃないですか?
ドッグフード(ドライ)はよく噛んで食べるから、歯に付いた汚れをフードがこそげ落としてくれるし、アゴも丈夫になる――と考えているなら、いまいちど愛犬がご飯を食べる様子をよく観察してみてください。
ポリポリ・カリカリといった音は聞こえるかもしれませんが、モグモグ咀嚼はしていません。実際のところ、ほぼ丸飲みに近いタイミングで飲み込んでいるのではないでしょうか。
それもそのはず、犬の歯は食べ物をよく噛んで飲み込むような作りになっていないのです。ほとんど丸飲みが犬の食べ方のスタンダード。
となると、たとえ網目構造のドライフードだとしても、歯に付着した歯垢を歯磨きの代わりになるほど、効率よくこそげ落とせるとは思えません。
さらに言えば、ドライフードはアゴが鍛えられるほど硬いものでしょうか。
そもそも、手作りご飯やウェットフードは歯に付着して歯垢になりやすいけれど、ドライフードは歯に汚れがつきにくい、という理屈そのものがどうにも納得できません。
私たち人間が飲み物なしでお煎餅やクッキーを食べるとしたら、口の中にカスがたくさん残りますよね。「人間は咀嚼するからで、犬はあまり咀嚼しないから」というのであれば、そもそもドッグフードを噛むことで歯の汚れが落ちる、という考え方そのものに無理があるような……。

ドライだろうが手作りだろうが、口内ケアなしでは歯周病まっしぐら
愛犬の食事はすべてドライフード、おやつは歯磨きガム、オモチャで遊ばせるときは歯の汚れが落ちるようにコットンロープのみ――。
それでも歯磨きなどの口内ケアを怠れば、あなたの愛犬は間違いなく歯周病にかかります。それも、老犬になってからという気の長い話ではありません。
おそらく3~4歳の頃には歯が黄色~薄茶に変色し、歯の根元や歯と歯の間には大なり小なり歯石が付いているはずです。
「でも、そのぐらいだったら少し歯磨きをすればきれいになる」などと思ったら大間違い!
付着している歯石を歯ブラシで落とすことはできないし、歯石の下ではすでに歯周病菌が増殖し、歯茎に炎症が起きていることでしょう。お口が臭いなどと笑っている場合ではありません。
結局のところ、手作りご飯派だろうがドライフード派だろうが、愛犬の歯周病を防ぐには歯磨きなどの口内ケアが絶対的に欠かせないのです。
百歩譲って手作りご飯の方がドライフードより歯に汚れが付きやすかったとしても、きちんと歯磨きをしていれば済むことですよね。
手作りご飯やウェットフードは歯垢がつきやすい、ドライフードはつきにくいという短絡的な考え方は、「歯磨きは面倒だけど、ドライフードを食べさせていれば楽できる」という間違った解釈を生み出す原因です。
重ねて申し上げますが、愛犬に手作りご飯を食べさせていようがドッグフード(ドライ)を食べさせていようが、歯磨きなどの口内ケアなしに歯周病を防ぐことはできません。

愛犬のアゴの力を鍛えるなら、骨ではなくオモチャで遊んであげよう
愛犬のアゴの力を鍛えるために、硬い骨を与える飼い主さんがいらっしゃいますが、この方法はあまり感心できません。
確かに犬は硬い骨をガジガジ噛むことが大好きです。しかし、実はかなり危険な行為でもあるのです。
犬といえば強靭なアゴの力でバリバリと骨をかみ砕くことができますよね。しかし、アゴの力が強いからといって、その力に比例して歯の質が強いとは限りません。
実際に、犬の歯のエナメル質は人間の約10分の1程度とかなり薄く、硬い骨をかじるといとも簡単に傷がついてしまうのです。
また、骨をオヤツ代わりにかじらせればカルシウムの補給ができると考えるかもしれませんが、カルシウムを大量に摂取するからこそ便秘の原因になることも…。
どうしても愛犬のアゴの力を鍛えたいのであれば、コットンロープで引っ張りっこをしたり、布製の柔らかいオモチャを噛み噛みさせたほうがよほど安全。ついでに歯の汚れも多少は落とす効果が期待できますので、一石二鳥ではないでしょうか。
今後の愛犬の健康にお役立て頂ければ幸いです。

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