ステロイドを飲めば、最初は数値が上がることがあります。今回のように、2.3から2.8まで上がることもあります。しかし、その後、減らすと下がる。戻すとまた少し上がる。でも以前ほど上がらない。さらに繰り返す。
この流れの中で、飼い主様は数値に振り回されてしまいます。
上がったら安心。
下がったら不安。
また増やす。
また下がる。
また不安になる。
この繰り返しの中で、いちばん見えなくなりやすいのが、目の前のワンちゃんの状態です。
食べているのか。
元気があるのか。
便はどう変化しているのか。
水をよく飲むようになっていないか。
おしっこの量が増えていないか。
薬を飲み始めてから、体にどんな変化が出ているのか。
今回の子も、水をよく飲む、おしっこの量が増えるというお話がありました。これはステロイドを飲んでいる子でよく聞く変化です。
私が大切にしている「3つのこと」
私は薬をすべて否定しているわけではありません。必要な時には薬も使います。実際、ご相談の中でも、その子の状態によっては薬が必要だとお伝えすることもあります。ただし、薬だけで終わらせてはいけないと思っています。
薬を飲んで数値が一時的に上がったとしても、食欲・便・排泄・体力・元気の状態がどう変わっているのかを見なければ、本当の意味でその子の体を見ていることにはなりません。
特にアルブミン低下の場合、食欲が落ちてしまってからでは、できることが一気に限られてしまいます。
だからこそ、今回のように、まだ食欲がある。まだ元気がある。まだ便として出そうとしている。この段階で気づけたことは、本当に大きなチャンスなのです。
ご相談の中で、私は飼い主様に「まず前向きになってください」とお話ししました。
もちろん、不安になるのは当然です。病院で「命に関わる」「数値が安定するまでは薬が必要」と言われれば、誰でも怖くなります。ましてや、半年間も上がったり下がったりを繰り返していれば、何を信じてよいかわからなくなります。
でも、飼い主様が不安なまま毎日を過ごすことは、ワンちゃんにも伝わります。
犬は本当に敏感です。飼い主様の不安、焦り、迷い、家族の中の空気。そういったものを、言葉ではなく空気で感じ取っています。
だからこそ、私はいつもお伝えしています。
しっかり食べさせること。
しっかり排泄させること。
そして、しっかり褒めること。
この3つです。
ご飯を食べたら褒める。便をしたら、たとえゆるくても、たとえ汚くても褒める。「出せたね」「頑張ったね」と声をかける。
なぜなら、その便はワンちゃんが必死で外に出そうとした結果だからです。飼い主様から見ると汚い便かもしれません。でも、ワンちゃんの体から見れば、生きるために出そうとしているものです。
ここを理解できると、飼い主様の見方が変わります。
下痢だから悪い。
ゆるいからダメ。
数値が低いからもう終わり。
そうではなく、今この子は出そうとしている。
まだ食べる力がある。
まだ体が応えてくれている。
だから今できることがある。
この見方に変わるだけで、飼い主様の気持ちは大きく変わります。
今回の飼い主様も、最初はとても不安そうでした。しかし、お話をしていくうちに、「希望が持ててきました」「頑張りたいです」とおっしゃってくださいました。
ここからが本当のスタートです。
まずはトライアルから始めていただくことになりました。10kgの子ですから、トライアルは正直、量としてはあっという間です。2日分あるかどうか、場合によっては1日分程度かもしれません。
それでも、まず食べるかどうかを見ることが大切です。
どんなに良いものでも、食べてくれなければ意味がありません。
体が受け入れてくれるか。
食欲がある今、きちんと反応してくれるか。
そこを確認するために、まずトライアルから入っていただきました。そして、すぐに食べてくれたとのことで、その後300gをご注文いただきました。
ただ、私はいつもお伝えしています。商品はあとでいいのです。
大切なのは、まず理解することです。
なぜ今この便が出ているのか。
なぜ食欲が大切なのか。
なぜ褒めることが必要なのか。
なぜ家族で方向性をそろえる必要があるのか。
ここを理解しないまま、ただ商品だけを使っても続きません。ネットで買うことは簡単です。でも、意味がわからないまま使えば、1回限りで終わってしまうことがあります。それでは、ワンちゃんにとっての大切なチャンスを失ってしまうことにもなりかねません。
だから私は、ご相談後に必ずご家族で話し合ってくださいとお伝えします。
今日、こういう話を聞いた。
この子の便にはこういう意味があるかもしれない。
食欲があることは大きな強みだと言われた。
しっかり食べて、しっかり出して、しっかり褒めることが大切だと聞いた。
その話を、ご家族で共有していただきたいのです。
もしご家族の中で、「それはおかしい」「騙されているのではないか」と意見が割れるのであれば、無理に始める必要はありません。しばらく様子を見てもいいと思います。
なぜなら、ご家族の中で不安や対立が起こると、その空気はワンちゃんに伝わるからです。過去にも、ご家族の理解がそろわないまま始めて、途中で夫婦喧嘩のようになってしまったケースがありました。そのストレスは、ワンちゃんにとって大きな負担になります。
一つの命を見ていく以上、家族の方向性がそろうことはとても大切です。
ご家族みんなが、「やってみよう」「この子のために、まず理解して進めよう」と思えた時に、初めてスタートしていただければいいのです。